こどもの矯正
こどもの矯正はいつから始めればいいの?
ヨーロッパをはじめとした欧米では、こどもの矯正は古くから行われています。基本的には1期治療(骨格矯正)と呼ばれる顎の骨のバランス・大きさを整える治療と、2期治療(歯列矯正)と呼ばれる歯の位置を整える治療の2段階で行う治療です。
特に1期治療は、これから成長していくためまだ顎の骨が柔らかい子供のうちだからこそ可能な治療です。この治療を行うことで、なるべく永久歯を抜歯せずに歯並びを整えることが可能となります。
1期治療では顎の骨を整え永久歯がきれいに生え揃うための土台を作ることができるため、多くの場合で部分的な歯列矯正で済んでいますし、場合によっては2期治療を行わずに済むこともあります。もちろん、歯並びの問題のすべてが小児矯正の適応ということではありません。
中には成長が止まってから、すべての永久歯が生え揃ってから治療を行った方がいいケースもあります。
お口の状態は一人ひとり異なるため「こどもの矯正治療はいつから始めたらいいの?」というご質問にお答えするのは難しく、実際に診察し様々な要素についてしっかりと考えた上で保護者様と相談し、治療について決定していくこととなります。
矯正治療をお考えでしたら、まずは担当医にご相談いただき、成長後の理想的な永久歯の歯並び・噛み合わせを目標に、お子様の将来的な成長を予測し、それをもとにして今必要と考えられること、出来ること、そしてその治療内容・治療期間・治療費用・治療のリスクなどをしっかりと検討するようにしましょう。「いつ矯正治療を始めるか」ということは、これらのことを十分に検討した上で決定されることをお勧めいたします。
こどもの矯正の治療時期の目安
こどもの矯正治療は、骨格の矯正を行う1期治療と、歯並びを調整して整えていく2期治療の2段階に分かれています。小児矯正専門医がお子様一人ひとりの歯並び・噛み合わせによって最適な治療の治療計画を立てていきます。
1期治療(骨格矯正)
3〜12歳頃が1期治療の目安です。骨格が原因となっている上顎前突(出っ歯)、下顎前突(受け口)などの症状は骨がまだ柔らかい年齢から治療を開始します。
ムーシールド、フェイスマスク、バイオネーターなどの上下の顎のバランスを改善するための装置を使い、正しいバランスに整えます。
また、顎が小さいために歯が生え揃うスペースが不足しているというケースをそのまま放置してしまうと叢生(八重歯など、乱ぐい歯)になってしまうため、取り外し式のプレート装置で顎を拡大し、永久歯が生え揃うためのスペースを確保します。
2期治療(歯列矯正)
10歳〜成人頃が2期治療の目安です。ワイヤーや透明のマウスピース型矯正装置を使って、歯並びをきれいに整えるための治療を行います。
1期治療で上手く永久歯の萌出誘導を行えた場合は、2期治療を行わずに済むケースもあります。矯正治療が終わった後は、リテーナー(保定装置)を使い、歯並びが後戻りを起こしてしまうのを防ぎます。
お子様の矯正の必要性
昨今、矯正治療によって歯並びを整える必要がある不正歯列のお子様が増加傾向にあります。
「歯並びがよくないと見た目が気になって可哀想だから」ということでお子様の矯正治療を始める親御さんもいらっしゃいますが、歯並びの乱れは見た目だけでなく、お子様の健康にも悪い影響を与えてしまうことがあります。
- 口を上手く閉じることが出来ず口呼吸になってしまい、お口の中が乾燥してしまう
- 歯が重なった部分に歯ブラシが届かず虫歯や歯周病になってしまう
以上のように、歯並びの乱れは健康に悪影響を与えます。矯正治療を単に見た目を整えるための治療と考えず、お子様の健康のためにも治療をご検討されてみてはいかがでしょうか。
小児矯正のメリット
- 顎の正しい成長を促すことで顔貌が整う
- 歯列不正が招く虫歯や歯周病を予防することが出来る
- 上手く食べ物を噛むことが出来る
- 発音を正しく行うことが出来る
- 歯並びがコンプレックスとなってしまうことがない
お口元の癖が歯並びを乱す?
歯並びが乱れてしまう原因には遺伝によるものもありますが、その他にも指しゃぶりや舌を前に出すなどの癖が原因で歯並びが乱れてしまっている可能性もあります。
鼻呼吸と口呼吸
いつもお子様がポカンとお口を開けているのであれば、もしかしたら「口呼吸」になってしまっている可能性があります。
口呼吸のデメリット
- いつも唇が開いているため出っ歯になる原因になる
- お口の中が乾燥し唾液量が少なくなるため、虫歯や歯周炎リスクが高まる
- アレルギー喘息や喉の炎症の原因の一つとなる
鼻呼吸のメリット
- 吸い込んだ空気を適度に加湿してから肺に送るため、交換がスムーズ
- 病原菌やほこりを鼻が取り除いてくれる
不正咬合によって上手にお口を閉じられないことが原因で口呼吸となることもあります。そのようなケースの場合、不正咬合を矯正治療によって治療することで口呼吸も改善されることがあります。
こどもの歯並び治療に新しい選択肢
「インビザラインファースト」
これまで、小学生の歯並び治療というと床矯正やマイオブレースという方法が一般的でしたが、新しい選択肢として目立たないマウスピース矯正である「インビザラインファースト」での矯正治療ができるようになりました。
1期治療と呼ばれる時期に行うマウスピースを用いた矯正治療のことをインビザラインファーストといい、床矯正やワイヤーを使って永久歯列期前に行っていた治療のほぼ全てをインビザラインファーストで行うことが可能です。
こどものインビザライン治療
―インビザラインを使った小児矯正―
2019年、成長過程のお子様のためのインビザラインによる矯正治療がスタートしました。インビザラインでは、アライナー(マウスピース)を1週間ごとに交換することで、徐々に歯を移動させていきます。
アライナーは透明で目立たず装着していてもほぼわからないため、見た目がコンプレックスとなってしまうことがありません。
普段と同じように食事や歯磨き、会話を行うことが可能です。軽度〜重度まで様々な歯並び治療に用いることができます。1日20時間以上と装着時間は長いものの、しっかりと装着時間を守れば治療は1年半で完了します。
装置は1週間ごとに新しいものに交換するため、お口の中を傷付けたり部品が取れてしまったりする心配もなく、緊急で歯科医院に通院しなければいけないこともほぼありません。
インビザラインファーストのメリット
- 透明で目立たず、矯正治療中だということが周囲にほとんど気付かれない
- 柔らかいプラスチック素材のため、金属アレルギーの方でも安心して治療ができる
- 薄くて滑らかな素材で、更にオーダーメイドで作製するためフィット感があり、矯正治療の痛みが不安という人でも安心
- 固定式の矯正装置の場合は取り外しができないが、インビザラインであれば簡単に取り外し可能なため、食事や歯磨きを普段通りに行うことができ、お口の中を清潔に保てる
- 2期治療がより簡単に、短期で行えるようになる
- 緊急対応が少なく、予定外の通院を減らせる可能性がある
インビザラインファーストのデメリット
- 外科矯正が必要となる歯並びなど、お口の中の状態によってはインビザラインでの治療が難しい場合があります。その場合は他の矯正治療をお勧めしています。
- 1日20時間以上の装着時間が必要となり、食事と歯磨きの時以外はほとんど装着している必要があります。装着時間を守らないと計画通りに歯が動かず、予定通りに治療が進まなくなってしまいます。予定通り18ヶ月の治療期間で治療を終えるためには、お子様ご本人とご家族の協力が必要となります。
- アライナーをはめた状態での飲食はお水のみ可能ですが、その他はできません。食事やおやつだけでなく、お茶やジュースは温度による変形や着色の恐れがあるため控えていただくよう当院ではお願いしています。面倒に思われるかもしれませんが、アライナーのケースを必ず持ち歩くようにして、アライナーを取り外してから飲食を行うようにしてください。
その他子どもの矯正装置
拡大床
拡大床は、中央にあるネジを回して床(歯が生えている部分)を拡大するために使われる装置です。生えてくる歯がきれいに並ぶためのスペースの確保を行います。拡大はゆっくりと行うため、痛みも生じにくいです。
取り外しが可能な装置のため負担は少ないものの、お子様が自分で外してしまうことで装着時間が不十分にならないよう見守ったり、ネジを回す必要があるためご家族の方の協力が欠かせません。
マルチブラケット
一般的によく知られている矯正装置で、ブラケットと呼ばれる装置を歯に装着し、そこにワイヤーを通して歯を動かしていきます。
マルチブラケットは歯の移動に優れた治療法であると同時に、当院には日本矯正歯科学会認定医も在籍しているため、難症例にも対応することができます。
また、当院で使用しているのは透明なブラケットとなっておりますので、金属の一般的なブラケットに比べて目立たない矯正治療を行うことが可能です。